【研究】肝細胞は薬品で再生する!?慢性肝硬変や非アルコール性肝炎、肝がんなどの治療に応用可能な肝前駆細胞CLiPとは?
肝細胞に二種類の薬品を加えるだけで強い再生能力を獲得
国立がん研究センター研究所の落谷孝広・分子細胞治療研究分野 主任分野長、勝田毅研究員らの研究チームが、人の肝臓の細胞(肝細胞)に2種類の化合物を加えることで若返らせ、再生能力を獲得させることに成功したそうです。
18年7月20日の日経新聞が伝えました。
(以下の研究は2016年頃の同チームの研究になります)
肝臓を再構築する肝前駆細胞へのリプログラミングにラット、マウスで成功再生医療やがん治療への応用に期待
肝細胞はウイルスに感染するなどして肝炎になると増殖を開始
肝細胞はいつもは増殖をさほどしないわけですが、肝炎に感染したりして損傷すると活発に増殖を開始します。
今回の研究は、この肝細胞の増殖を意図的に薬品を用いて起こすことに成功したものです。
成熟肝細胞に低分子化合物を加えるだけで肝臓を再生する肝前駆細胞CLiPへと変化
80種類の化合物を様々な組み合わせで成熟肝細胞に加えたところ、肝炎にかかった時と同様の状態になり、高い再生能力を獲得したのだとか。
この細胞をマウスに移植すると、8週間後には肝臓の9割が人の肝臓に変化していたということです。
この高い分化能を持った肝細胞をChemically-induced Liver Progenitors: CLiPと命名
あわせてこのCLiPの特徴として
- 低分子化合物環境下で増殖して安定的に培養できること
- 長期培養したあとでも、刺激を与えてやれば肝細胞へ再度分化することが可能なこと
- 自律的に増殖するようなガン化はしていないこと
- ラットだけでなくマウスの肝細胞でもCLiPを誘導できること
などを確認したということです。
肝前駆細胞CLiPは多能性幹細胞由来の肝前駆細胞よりもガン化の可能性が低く安全
iPS細胞などを用いた肝臓細胞の再生技術なども研究が進んでいますが、現状では十分な量の肝機能を獲得することができておらず、またガン化の可能性も高いと言われています。
肝前駆細胞CLiPであればこういったリスクがないとともに、高い再生能力を持っていることがわかったとのことです。
肝前駆細胞CLiPが慢性肝炎患者に生体肝移植以外の新しい治療法を提供?
まだこの肝前駆細胞CLiPの研究は実用化されるまでに時間がかかりそうですが、もしこれが実用化されたなら、肝臓病は以前よりも遥かに簡単に治る病気になりそうです。
もしも肝前駆細胞CLiPの研究がすすんだなら、重症の肝臓病や慢性肝硬変、非アルコール性の肝炎、肝がんなどの治療にも利用可能になるということです。