アトピー性皮膚炎は皮膚の常在細菌のバランス崩壊が原因?

アトピー性皮膚炎は皮膚の常在細菌のバランス崩壊が原因?

 

 

アトピー性皮膚炎に悩む人が増えています。

かさかさ、じゅくじゅく、痛かったり、かゆかったり

局所的だったり、関節部だけだったり、手足だけだったり、体中だったり・・・

本当にいろいろな症状の方がいます。

そして、症状が多様であるのと同じく、実は原因もまた、多様なのではないかと言われてきています。

今回はアトピー性皮膚炎の原因のうち、皮膚常在細菌が引き起こすアトピーについて考えてみたいと思います。

 

 

アトピー性皮膚炎の原因には多種多様な要素がある

アトピー性皮膚炎は最初に症例が報告されてから、かれこれ一世紀近くたつわけですが、いまだにこれが絶対的な原因だというものが見つかっていないのが現実です。

というのも、実際のところアトピー性皮膚炎というのは皮膚の炎症全般を指して使われている可能性が高く、よくわからない皮膚炎はすべてアトピー性皮膚炎にしておけ、といったような態度が以前にはあったからではないかと思われています。

実際には細かく場合分けして、それぞれの解決方法を示すべきなのに、アトピー性皮膚炎という言葉で十把一絡げにして語ってしまう・・・そういうところが、皮膚科の世界にはあったように思います。

 

アトピー性皮膚炎は多因子疾患~常在細菌、セラミド減少、フィラグリン変異

アトピー性皮膚炎は多因子疾患といわれます。

これは、アトピー性皮膚炎がもともとの遺伝的な要素に別の発祥のメカニズムが関与することで発症するという考え方です。

たとえばそれは、角質のフィラグリン変異であったり、何らかの要因で皮膚バリアの内側に侵入したアレルギー物質であったり、セラミドの減少であったり、皮膚常在細菌のバランスであったり、腸内細菌のバランス悪化による消化不良であったり・・・

本当にいろいろな要素が発見され、たぶんそのどれもがある程度正しく、かといってすべての場合に当てはまるわけではない・・・そんな感じの状況になっています。

 

 

皮膚常在細菌のバランスの崩れがアトピー性皮膚炎を誘発?

数あるアトピー性皮膚炎の原因のなかで、最近になって言われているのが、皮膚常在細菌のバランス悪化による皮膚炎です。

一般的に、健常者の皮膚常在細菌は表皮ブドウ球菌をメインにしたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であるところ、アトピー性皮膚炎の患者さんでは黄色ブドウ球菌が高頻度で存在。

皮膚炎の程度によって黄色ブドウ球菌の濃度は変化することが知られており、またその逆に、黄色ブドウ球菌の量によってアトピー性皮膚炎の状況も変化することが報告されています。

つまり、黄色ブドウ球菌の量をコントロールすることがアトピー性皮膚炎の治療に好影響を与える可能性が示唆されているわけです。

 

 

アトピー性皮膚炎と脱ステロイドと皮膚常在細菌のバランス

こうやってみてみると、脱ステロイド療法にも、ある一定の場合には有効性があるのかもしれない、という気がしてきます。

もちろん、個人的には脱ステロイド療法に対して批判的なのですが、しかし、常在細菌の関係で言うと、ステロイドは必ずしも好ましい解決をもたらさないのも事実です。

抗真菌剤などを使わず、ただステロイドだけを利用するなら、細菌は好ましいものも好ましくないものも増加する可能性があります。

かといって、抗真菌薬を配合したクリームなど(リンデロンVクリームなど)では、皮膚に刺激が強すぎる可能性があります。

こうしたことから、脱ステロイドを主張する人がいるのかな、という気がします。

 

 

アトピー性皮膚炎の皮膚常在菌バランス改善に海水浴が好影響?

アトピー性皮膚炎の民間療法はどれもこれもろくでもない、単なる金儲け商法が多いのですが、唯一しっかりとした効果を示したとされるのが、海水浴です。

海水浴をすると体中の細菌バランスは軽くリバランスされますし、また翌日、さらに翌日と長期間する継続することで、細菌のバランスがしっかりとしたものになっていたのかもしれません。

海水浴には効果があるという結果が出ているのは、こうした皮膚常在菌のバランス改善が影響している可能性はあります。

 

 

アトピー性皮膚炎の皮膚常在菌バランス改善にブリーチバス療法が効果的?

海水浴療法と似たものなのですが、アトピー性皮膚炎の治療にブリーチバス療法というものを取り入れた治療法があるそうです。

これは黄色ブドウ球菌を殺菌するために、週に二回程度、次亜塩素酸ナトリウムを一定程度入れた水に浸かる治療法とのこと。

詳しいことはわからないのですが、たぶん海水浴療法とおなじ効果を期待してのものでしょう。

海外ではこういった方法をしている方もいるのだとか。

日本でも慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の海老原准教授が臨床試験をしているとのことです。

 

 

アトピー性皮膚炎治療のため、皮膚常在菌を移植する治療法

健常な皮膚から採取した皮膚常在菌Roseomonas mucosa(R. mucosa)を移植すると皮膚炎が改善し、逆にアトピー性皮膚炎の患者から採取した皮膚常在菌を移植すると皮膚が悪化することが発見されたとのこと。

これを受けて、米国国立アレルギー・感染症研究所の研究グループでは、健康な人の皮膚常在菌を移植する治療法の研究が行われているということです。

 

 

ここ数年でずいぶんと進化したアトピー性皮膚炎の治療。

こうやってみてみると、1990年代の脱ステロイドブームは一体何だったんだろう?という感じがします。

また、ステロイド万能を信じ込むのも短絡的過ぎました。

ある意味、そういったアプローチ以外を探ってみる価値はあったわけです。