フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)の致死量ってどのくらい?
今回は、睡眠障害の方に処方されることの多い睡眠導入剤(睡眠薬)、フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)の致死量について書いていきたいと思います。
小説などではよく睡眠薬をあおって死ぬような表現がありますが、果たしてフルニトラゼパム(サイレース)でもそんなことはあるのでしょうか?
もしあるとすれば、どういった場合でしょうか?
そのことについて書いていきたいと思います。
フルニトラゼパム(サイレース)の致死量は何錠くらい?
睡眠薬として普及しているフルニトラゼパム(サイレース)ですが、この薬を飲んで死ぬことはあるのでしょうか?
先に言ってしまいますが、薬理作用的には、その可能性は限りなく低いと言われています。
フルニトラゼパム(サイレース)などベンゾジアゼピン系睡眠薬は、マウスやラットによる経口致死量LD50でいうと、ほとんど1000㎎/㎏以上です。
つまり、人間で言えば少なくとも50000錠程度を飲まなければ、理屈的には死ぬことはないとされています。
また、この数字は「少なくとも」であって、実際には20万錠以上の摂取がフルニトラゼパム(サイレース)の致死量であると思われます。
現実的に言って、これほどの量の睡眠薬を同時に摂取することなどありえないため、フルニトラゼパム(サイレース)による薬理作用による死亡はほとんど考えられない・・・ということになります。
フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)の致死量は気にする必要がない?
上記で書いた通り、フルニトラゼパム(サイレース)の薬理作用としての致死性はかなり低いです。
少なくとも薬理学の範囲で語る限りにおいては、治療係数LD50/ED50比がここまで大きいと、単純にフルニトラゼパム(サイレース)の大量服用による致死毒によって死ぬことはまずありえないです。
しかし、実際にはフルニトラゼパム(サイレース)の服用を原因にした死亡事例もあるとされています。
本来であれば死なないクスリであるはずのフルニトラゼパム(サイレース)で死ぬ理由はなぜでしょうか?
常識的な水準のフルニトラゼパム(サイレース)を飲むだけなら致死量なんて気にしなくて大丈夫なはずだが・・・
普通に考えて、数万錠ものフルニトラゼパム(サイレース)を飲むなんてことはありえませんから、常識的に考えれば薬理作用での致死性はないとみられがちです
ただ、次に書くように、薬理的な面ではなく、他の要素で致死性を持つ可能性があるのが、フルニトラゼパム(サイレース)などの睡眠薬の恐ろしい所です。
これはフルニトラゼパム(サイレース)に限ったものでなく、他の睡眠薬でも同じ問題を孕んでいます。
致死性がない(致死量が多い)と思われているフルニトラゼパム(サイレース)による死亡報告例
薬理学的な致死量で言えばありえないと思われがちなフルニトラゼパム(サイレース)ですが、死亡報告例もあるにはあります。
その多くは薬理学的な問題によるものではありません。
フルニトラゼパム(サイレース)を大量に飲んで、長時間寒い場所に置かれたことによる低体温症、長時間横たわっていたことによる横紋筋融解症(薬剤性挫滅症候群)、筋コンパートメント症候群、誤嚥性の障害などによるものです。
また、喉の奥に舌が巻き付いたなどの窒息事例もあり、睡眠時に意識がないまま苦しまずに死ぬのではなく、かなり苦しんで窒息する・・・というのがフルニトラゼパム(サイレース)といえます。
フルニトラゼパム(サイレース)とアルコール他薬物の使用で致死量低下の可能性
フルニトラゼパム(サイレース)単独であれば致死量はさほどでないはずですが、アルコールやほかの薬と一緒であれば致死量が変わる可能性はあります。
ここらへんの薬理作用はすべてが判明しているわけでありませんから、完全なことはわかりません。
フルニトラゼパム(サイレース)を処方されているかたは、同時に抗精神薬なども同時に処方されている場合がほとんどだと思われます。
この場合、フルニトラゼパムだけの薬理作用をみて致死量を判断するわけにもいきませんので、何とも言えないものがあります。
フルニトラゼパム(サイレース)の致死性を期待して自殺目的に利用する人は愚か
とりあえず、上でも書いたように、フルニトラゼパム(サイレース)にはほとんど致死性はないはずです。
もし服用で死ぬことがあるなら、それは昏倒による脳挫傷や舌を飲み込んだことによる窒息などのはず。
Wikipediaなどによると、スウェーデンではフルニトラゼパム(サイレース)を自殺するために大量に飲む人もいるようですが、まったく無意味です。
苦しまなくて済むと思っているのかもしれませんが、寝ている状態で自然と死んでいくようなものではなく、痛い痛い思いをして苦しみながら死ぬことになります。
まったく無意味です。
馬鹿げた考えはやめるべきです。
強力な睡眠薬のフルニトラゼパム(サイレース)に致死量がないなら、小説の中で睡眠薬を大量に飲んで死ぬ表現は嘘?
フルニトラゼパム(サイレース)は非常に強い睡眠薬です。
ですが、薬理作用からみたら致死量はほとんどありません。
少なくとも、現在の科学ではフルニトラゼパム(サイレース)にはほとんど致死量の問題はないとされています。
では、小説やコミック、映画などでありがちな(?)、睡眠薬の小瓶をあけて飲んで自殺する表現は、あれは嘘なんでしょうか?
・・・いえ、実はあれはあれで正しかったりします。
かつて主流だった睡眠薬(抱水クロラールやバルビツール酸系睡眠薬など)は、じっさいに非常に強い致死量があったんです。
ただ、あまりにも副作用の問題、依存症の問題、致死量のシビアさの問題などがあったため、現在ではその多くが規制されています。
とくに1900年代以前に主流だった抱水クロラールなどは、ほとんどアルデヒドのようなハイドレート体であり、塩基と反応するとクロロホルムになる劇薬です。
この抱水クロラールは睡眠障害の治療に使われるにはあまりにも危険すぎましたから、その後バルビツール酸系睡眠薬にとってかわられました。
しかし、このバルビツール酸系睡眠薬も相当な劇薬で、治療域が狭い・・・そして、1960年代ころからベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場したのです。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬には副作用として依存などの問題点はありますが、少なくとも以前のような薬理作用的な致死量問題はほぼない、とされています。
フルニトラゼパム(サイレース/ロヒプノール)と反跳性作用~反跳性不眠が続く期間は?
現在私たちが利用できる薬は、過去の人達の犠牲の上になりたっています。