ベンゾジアゼピン薬物乱用について~フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)
ベンゾジアゼピン系睡眠薬、とりわけその中でも最強クラスといわれれうフルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)は、かねてより薬物乱用の問題を孕んできました。
今回はそういった点から、睡眠薬の問題について考えていきたいと思います。
ベンゾジアゼピン薬物乱用とフルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)
現在、日本の睡眠薬市場で多く処方されているベンゾジアゼピン系睡眠薬ですが、その発売当初から別の用途に乱用されることが多く、世界中の国々で問題となってきました。
とくにフルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)は
- アルコールとの併用によるデートレイプドラッグとして利用されたり、
- 覚せい剤などの使用に伴う不眠症状を抑えるために乱用されたり
- ヘロインやコカインなどの違法薬物の効力を増強するために利用されたり、離脱症状の緩和、バッドトリップの緩和
などのために利用されてきました。
また自殺目的で利用する者も多いとされ、スウェーデンではニトラゼパムとフルニトラゼパムの濃度が高い自殺者が多かった(全体の15%程度)とのことです。
(実際には自殺目的で使用したのか、それとも眠れず多用したせいで死亡したのかは定かではありません。)
こうした乱用の問題から、現在フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)は世界の多くの国で規制対象となっています。
フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)に対する各国規制
- アメリカでは規制物質法スケジュールⅣ、一部州ではスケジュールⅠ。海外旅行客の持ち込みも制限。
- 中国では合成麻薬と同等扱いの第三代毒品。違法薬物として処罰対象
- イギリスではNHSで処方禁止薬として登録。プライベート処方は可
- シンガポールでは薬物乱用法にてスケジュールⅡ規制薬物。持っていたら逮捕される可能性高し
- アイルランドではスケジュール3禁止薬物
- オーストラリアではスケジュール8規制薬物。覚せい剤や他の麻薬と同等であり、無許可での保持は処罰対象
- ノルウェーでは2003年からスケジュール規制格上げ
- フランスでは販売禁止
- 南アフリカではスケジュール6に分類、処方箋でのみ利用可能
こうやってみると、フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)への規制に関しては、日本がかなり緩いことがわかります。
メキシコやドイツと同程度に緩いです。
フルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)などベンゾジアゼピン系睡眠薬のおそろしさ
以上のように、世界では規制がかなりかかっているフルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)ですが、日本では比較的頻繁に処方される薬だと思います。
夢遊病やせん妄、不眠、不安症状などの問題点がかねてより指摘されながら、いまだにこんなキツい薬が市場に供給されまくっているのが現状です。
アメリカでは、こういったベンゾジアゼピン系睡眠薬の問題点が強く意識されてきており、非ベンゾジアゼピン系や他の睡眠薬、たとえばスボレキサント(ベルソムラ)などが利用されたり、
選択的デュアルオレキシン受容体拮抗薬スボレキサント(ベルソムラ)~新型睡眠薬~
メラトニンの利用により睡眠の質自体を改善する方向にしています。(日本でメラトニンは入手困難です)
まったくフルニトラゼパム(ロヒプノール/サイレース)を捨て去れとは思いませんが、日本もそろそろ他の手段を考えるべきなんじゃないか、と思います。